届いた本・読んだ本

このマンガを読め! 2008』(フリースタイル)が届く。ベスト10に入った作品を10ページほど再録しているのがウリ。引用に厳しかった時代からすると、隔世の感がある。ぼくもアンケートに回答したが、5冊中1冊がベスト10に入っただけで、あとの4冊は集計表では「その他」に入れられてしまっている。マンガ読みの感度が低いと云われても仕方がない。でも、ぼくみたいな門外漢が、いましろたかし『盆堀さん』や武富健治鈴木先生』に点入れても、いまさらねえ。それよりは、自分の好みに徹するほうがマシでしょう。


『工作の時代 『子供の科学』で大人になった』(INAXギャラリー)は、12月7日から〈INAXギャラリー名古屋〉で始まった展覧会の図録。祖父江慎のデザインは、『子供の科学』の書き文字をふんだんに使っている。同誌関係者の証言が載っているが、元編集部の加藤美明という名前にエッと思う。ぼくが以前調べたことのある加藤美崙は、創業時の誠文堂新光社でベストセラーを出している。まさか、その美崙の子孫ということはあるまいが……。同展は来年3月から東京、6月から大阪に巡回する。


もう一冊は、橋爪節也編著『大大阪イメージ 増殖するマンモス/モダン都市の幻像』(創元社、2400円)。今年2月に神戸で、海野弘さんと橋爪さんのトークがあったとき、「大大阪」に関する本を準備しているとおっしゃっていた。10人以上が執筆しているが、論文集のようなとっつき難さはない。文学、美術、音楽、写真など、さまざまな切り口から「大大阪」に入っていける本になっている。古川武志「趣味人たちの“大大阪”」あたりから読もう。


最近読んだ中では、『直筆で読む「坊っちやん」』(集英社新書 ビジュアル版)がおもしろかった。文字遣いに慣れるまでは時間がかかったが、癖が飲み込めてからは読むスピードが上がった。それでも読了までに3日かかったが。秋山豊の解説は丁寧だが、ちょっと不審な点も。先行研究である、山下浩『本文の生態学 漱石・鴎外・芥川』(日本エディタースクール)からの知見を踏襲している(たとえば、「バッタだらうが雪踏だらうが」が「足踏」だったことなど)のに、同書の存在にまったく触れていないのだ。ひとつには、秋山氏は現行版の岩波『漱石全集』の編集者であり、山下氏がこの全集を激烈に批判していた(当時その論文を図書館で捜して読んだ)という因縁があるためかもしれない。しかし、もっとも大きな理由は、2年ほど前に山下氏が勤めていた大学で不祥事を起こしたコトに関わっているのではないか。


ミステリ系では、折原一を片っ端から読んでいる。デビュー当時はワリと読んでいたのだが、初期のユーモアミステリっぽい数作が肌に合わずにしばらく遠ざかっていた。しかし、一冊読み出すと、たちまち叙述トリックのとりこになった。この一ヶ月ほどで20冊は読んだのでは。まだ20冊ぐらい未読があるので、楽しみだ。中町信といい、ぼくはどうも叙述トリック物が向いているらしい。