牛イチロー先生いわく、「いい本ばかりですね、じゃ、あと100冊!」

kawasusu2006-11-25

朝8時半起き。「まぼろしチャンネル」の「帝都逍遙蕩尽日録」(http://www.maboroshi-ch.com/cha/nandarou.htm)が更新されている。今回は湯島と上野。クリント・イーストウッド監督《父親たちの星条旗》(2006・米)を観たことなど。昨日の日記を書き、部屋を掃除する。


11時過ぎに、牛イチロー先生こと岡島一郎くんが到着。倉庫に入れておいた段ボール箱5つ+縛ってない本を車に積み込む。そのあと、根津の〈赤札堂〉に付き合ってもらい、透明ケースを大5つ、小3つ買って車に乗せる。「それ全部に本を入れるつもりですか!?」と牛先生は大笑い。谷中のアパートで透明ケースを3つ下ろし、本を50冊ばかし積む。また西日暮里に戻ってもらい、ココでも透明ケースを5つ下ろす。


牛先生から12月21日(木)〜22日(金)の「立石書店オープニングイベント 古本市/夜・昼」のポスターを受け取る。〈にわとり文庫〉の西村さんのデザインで、なかなかイイ出来だ。「200冊以上渡したから、こんなもんでイイよね?」と牛先生に云うと、「いい本が多いから売れますよ、きっと。だから、あと100冊は欲しいっすね!」と明るく返される。早稲田進出で張り切っているおかげで、ずいぶん押しが強くなったなあ。


1時過ぎたので、〈ときわ食堂〉へ。エビフライ定食。その近くの建築会社の入り口前に、段ボール箱が3つ置いてあり、なかに本が入っている。すわ、臨時の「一箱古本市」かと思えば、不要な本をタダで提供しているのだった。実用本が多かったが、一冊だけ、大宅壮一編『わが青春の記』(青春新書)をいただく。


そのあと〈古書ほうろう〉に寄ると、「古本すなめり」コーナーに、小林信彦『東京のロビンソン・クルーソー』(晶文社)があた。一箱古本市にも出してたときは5800円だったが、今回は8000円。ちょっと高い。でも、買い逃したほうが悪いので、おとなしく買っておく。ともあれ、コレで『東京のロビンソン・クルーソー』『東京のドン・キホーテ』『われわれはなぜ映画館にいるのか』が揃った。あとは懸案の『エルヴィスが死んだ』を入手すれば、「晶文社四部作」は揃うのだが。しかし、すなめりさんは『ロビンソン』を一体何冊持ってるのか? 「すなめり」コーナーは明日が最終日とのこと。


ウチに帰ると、みずのわ出版から林哲夫高橋輝次・北村知之編『神戸の古本力』が届いている。〈海文堂書店〉での3人のトークの記録をベースに、神戸の古本屋についての諸氏のアンケート(南陀楼も回答)、八木福次郎さん、内堀弘さんのエッセイなどを収録。巻末の神戸古書店リストと地図は、各時代の資料から採録しており、時代ごとの変化が読み取れる。表紙には、昭和14年の『全国主要都市古本店分布図集成』から地図を拡大して載せている。これは八木福次郎さんからぼくが借りて、カラーコピーして送ったもの。編集からデザインまで林哲夫さんの目が行き届いており、みずのわの柳原さんには悪いが、『sumus』の別冊のように思える。読んで楽しいとともに、今後10年、20年と使える資料になっている。大阪や京都でも「古本力」シリーズを出してくれないかな。東京は広すぎるけど、エリアを区切ってやってみてもオモシロイかも。


そういえば、昨日は同書刊行記念で、〈海文堂書店〉で「三箱古本市」が行なわれ、かなり盛り上がったようだ。それは、ご同慶の至りだが、このイベント名はちょっと「?」である。「一箱古本市」に敬意を表してくれたのかもしれないが、アレは一箱という制限の中で本を並べるから面白いのであって、一人三箱だったらフツーの古本市でしょう。ちょっと釈然としないネーミングであった。


少しゴロ寝。そのあと牛先生の忠言にしたがい、また「けものみち」の整理を再開。8時ごろまでかかって、新たに100冊以上掘り出した。晩飯はサバの焼いたのと、こないだのギョーザの具の残りを炒めてご飯に掛けて食べる。明日の産経新聞の読書面に、『路上派遊書日記』の書評が載るそうです。評者は枝川公一さん。どんな取り上げ方か、楽しみだ。【すいません27日付だそうです。月曜日に書評が載るとは思わなかったので、間違えました。】


では最後に、今夜も「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」をお届けするが、その前に昨夜掲載の『Sage』について、書誌鳥こと森洋介さんよりメールが来たので、転載する。

『Sage さぁじゅ』(情報出版→三共社)は、學生時代(一九九一年)に古本で知って、今まで大分蒐めました。あんな「かなりいい加減な編集の雑誌」を物好きなと思はれませうが、何度目のリニューアルなのか、一九八四年一月號からA4の大判になって、羽良多平吉府川充男デザインで内容もニュー・アカ寄りに刷新されたのが目を惹きまして。まあちょっと、薄い『GS』といった感じ。これは古書目録にも出る位ですからご存知でせう。
 cf. http://www.tokyo-zukan.com/catarogue/00SpeEdit1st1.html


 もっとも讀者投稿欄を見るとこれにも贊否兩論、その後雜誌そのものが長く續かず七月號限りで廢刊になったやうで、消える前の蝋燭の輝きか。とはいへリニューアル前でも、連載訪問記事「本をめぐる奇人・変人」に故・福島鑄郎が載ってゐたりしたのは拾ひ物です。その一九八三年五月號表紙には「スーパーストアの警備員は本の気狂」、目次には「スーパーストアの警備員の正体は本の虫」、本文見出しには「スーパー・ニチイの警備員、実は書誌大研究家」とあり、中に入るほど段々と表現がおとなしくなるのがまた可笑しい。同じ連載で一九八三年一月號に、府川充男が「編集する雑誌が次々休刊になる渡り鳥編集職人」として紹介されてゐるのは前兆らしく、これも微笑を誘ひます。


「このあとの日記でも誌面への憤懣が多し」といふのは、後になって『Sage』を知った者としては、同時代の讀者の反應を知れさうで樂しみです。
『Sage』の名が出たのが嬉しく、ツイ書きつけました。


(2伸)一九八三年五月號までが『SAGE[サージュ]』といふカタカナを角括弧内に入れて添へた表記、六月休刊で七月號から『さぁじゅ SAGE』と平假名の方を大きくし英字を副へた表記にリニューアル。


ってコトで、森さん、いつもありがとう。では、日記本文を。『みゆき』への愛は募るばかり。

1981年2月20日(金)
★今日、槙原(ツンコ)が『みゆき』はすごくよかったと言ってくる。
女までいいとなるとこれはよっぽどいい作品だろう、ちょっとスケベではあるが、これは問題外。これも充分におもしろいし、そんな所がなくてもいいものはいい。*1
早く2巻が出てくれないと、待ちくたびれてしまう。少年ビッグコミック(『みゆき』連載)でも買って読もう。
この作品のことばかり、ここしばらく書いているが、それはこれが良いからだ、こうして書いて気をまぎらわさないといけない。
この調子で他の人にも見せれば喜ぶだろう。
いっそのこと、「みゆきF・C(ファン・クラブ)でも作ろうか。*2


★そろそろ「星新一ショート・ショート・コンテスト」の結果が出ているはずだが、まだない。*3
落選か入選か。入選だったらいいのだが。


などと、すぐに甘い期待を抱くところは、いまでもあんまり変わってない。(続く)

*1:なにが「問題外」かは不明。『みゆき』のエッチなところが好きなんじゃない、と自分を納得させているようだ。

*2:それだけはヤメてくれ〜!

*3:星新一責任編集の雑誌『ショート・ショート・ランド』(講談社)で作品を募集していた。コレが初めて書いたショート・ショート。ただし、「おはなし」レベルだと、小学校3年生で書いている。そのときのも星新一の「かがみのなかのいぬ」に影響を受けて書いたものだった。