けもの道で誘惑

同じコトを書くのもイヤになるが、昨夜も暑いのと蚊に刺されてかゆいので、たびたび目が覚めてしまった。とても快眠とはいかず。朝飯のあと、旬公と銀座へ。松坂屋の前まで行くと、10時半開店だったので、近くの〈ブックファースト銀座店〉へ。平井隆太郎『うつし世の乱歩 父・江戸川乱歩の憶い出』(河出書房新社)、小松左京谷甲州日本沈没 第二部』(小学館)、宮沢章夫『「80年代地下文化論」講義』(白夜書房)を買う。『日本沈没』は映画の公開に合わせて、続編やらマンガ化(『ビッグコミック・スピリッツ』。かなり面白い)がされている。いまの中学生が読んでもオモシロイはずなので、『進学レーダー』で原作を紹介するつもりだが、いまは光文社でなく小学館文庫に入っているのだった。小学館文庫は、新潮のOH文庫と並ぶ完全に失敗した文庫として、コーナー自体がない店が多い。このブックファーストですら見つけられなかった。


松坂屋に戻り、「銀座ブックバザール」の会場へ。開店直後ではあるが、お客さんはぼちぼち。自分たちのブースを見ると、あまり量が減っていない。高めに値段をつけた本はほとんど動かず、安いものから売れているという印象。帳場に入り、二日分のスリップをもらう。14日(金)が16点で1万50円、15日(土)が26点で1万5750円だった。ココまでの4日間で5万円には達したが、もっと工夫が必要だったかもしれない。旬公が並木通りの〈ABCマート〉で靴を買うのを手持ち無沙汰に待ち、有楽町駅前の〈中園亭〉で鳥そば。近くの喫茶店でコーヒーを飲んで、ウチに帰る。


午後は、某所に提出する書類やら、「早稲田古本村通信」の原稿やら、企画書の直しやらをやっているうちにまたたく間に過ぎる。晩飯(豚肉とタマネギ、ニンジンの煮物)を食べつつ、テレビで《運命の女》を観る。ダイアン・レインの人妻が、本のディーラーをやっているという若者と浮気するハナシ。その男が「そっちの右側の棚の左から三番目の本を取って。その三十ページ目を読んで」と、女に詩を読ませるシーンは噴飯モノ。女をコマす(下品で失礼)ために、同じ位置にその手の本を置いてるに決まってるだろう。ぼくもウチのけもの道で、「そうそう、その積んである山、いや、その隣の山の上から25冊目(下から数える方が早い)を引っ張り出して」などと誘惑してみるか。映画はそのあと、なんの盛り上がりも見せずに終わった。あとで2002年製作だと知り、驚く。ナニもかにもが10年前のセンスの映画だった。


そのあと、何本か原稿到着が遅れていた「書評のメルマガ」を編集して発行。林哲夫さんの今回の書評は、UBCでの小沢信男さんの話をマクラに、辻征夫の詩集との出会い、そして『きりん』、菅原克己、杉山平一とつなげていくもの。先週、仙台の〈ブラザー軒〉に行ったので、よけい興味深かった。その林さんの「神戸の古本力」と題するトークショーが、明日の海の日、神戸の〈海文堂書店〉で開催される。ゲストは高橋輝次氏と北村知之氏(「エエジャナイカ」)。2階のギャラリーで2時から開始。関西の方はぜひどうぞ。