げんげ忌でリフレッシュ

9時起き。『彷書月刊』の原稿を書く。これは連載の方で、今月はもう一本、特集の方もあるのだった。ああ、しんど。12時半に旬公とウチを出る。六阿弥陀道を通ると、あちこちで桜が満開だ。この時期はとくに、この辺りに住んでいてヨカッタなあと思う。


谷中の全生庵で、「げんげ忌」に出る。詩人・菅原克己をしのぶ会。今年で18回目。ぼくが最初に出たのは6、7年前だろうか?(昨年の日記で「7、8年前から」と書いてるが、これはどうもアヤシイ)。だんだん知り合いも増えてきた。今回は、右文書院の青柳さん(川崎彰彦『ぼくの早稲田時代』が会場で完売!)、フリー編集者の堀内恭さん(『暮しの手帖』に菅原克己詩集『陽気な引越し』を紹介する文を書いた)らも初参加。去年、菅原克己の詩をマンガにした、山川直人さんと内田かずひろさんとも話す。今年は間に合わなかったら、来年のげんげ忌には第二弾をもって来るそうだ。山川さんはもうすぐ『コーヒーもう一杯』の第2巻を出されるそうで、これも楽しみ。詩人のアーサー・ビナードさんから『出世ミミズ』(集英社文庫)をいただく。あと、昨年亡くなった高田渡さんの奥様もいらしていた。遠目で見ただけだが、きりっとした感じの女性だった。


今年の会は、菅原克己をめぐる新しい動きの報告会といった風情で、宮城県塩竈でおこなわれた「げんげの詩人展」について(会場で配布した『菅原克己さんを知っていますか?』という小冊子がとてもよくできている)、げんげ忌のメンバーでつくった『げんげ通信』創刊号について(いい年のおじさんたちが、新しい雑誌をつくることにワクワクしている様子が伝わってきた)などの報告のほか、焼け跡から発見された菅原克己の肉声テープを聴かせてくれた。初めて接する詩人の声だった。そのあとに、塩竈友部正人さんが行なったリーディングの模様も放送されたが、「マクシム」の詩の朗読の速さが、作者本人と友部さんではかなり違う(本人の方がゆっくり)ことが興味深い。声っておもしろいなあ。


ちなみに、友部さんが菅原克己の詩を知ったのは、ひがしのひとしの[マクシム]というアルバムでだそうだ。1975年にURCレコードから発売されたファーストアルバム……ということだが、恥ずかしながら知りませんでした。アマゾンを見ると、このアルバムはエイベックスイオの「URC音源CD化プロジェクト」のリストに挙がっている(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000A1LY7/249-4227489-1015541)。友部さんもそうしたというが、ぼくも投票しておいた。


げんげ忌に出ると、いつも元気になる。組織や世代に関係なく、菅原克己の詩が好きだ、という一点で集まっている人たちによる会だからだ。しかも、世話人小沢信男さんが喝破したように、直接師事した人たちだけが菅原さんを囲い込むのではなく、外に向って開かれている。こういう集まり方は、本当に稀有だと思う。ぼくは毎年、げんげ忌があると、帰りに「明日から菅原克己の詩を一日一篇読もう」と思うのだが、気がつけば一年すぎ、そして次のげんげ忌で誰かの朗読を聞いてまた同じコトを思うといったレベルなのだが、そんな不勉強な者でもその場にいさせてくれる心の広さがある。このあと、みなさんは谷中墓地の花見に向うのだが、次の用があるので参加できない。また、来年。


渋谷〈ロゴスギャラリー〉での日月堂プレゼンツ「学校用品店」(http://www2.odn.ne.jp/nichigetu-do/top_image/gakko2006.htm)を見に行くつもりが、意外に遅くなったので後日にして、吉祥寺へ向う。井の頭公園の花見からの流れのせいか、どこに行っても大混雑。ライブ前に食べておこうと、〈MANDALA-2〉の2軒隣にあるワインと旬菜の店という〈ototo〉に入る。メニューを見るとなぜか、日本酒は出雲の酒ばっかりだ。このうち「天穏」はぼくの近所にある蔵元で、そこの娘とは小学一年生のときに一緒に学級委員をやっていた。懐かしくなって、純米酒を頼む。料理はニョッキのクリームソース、ブリの味噌漬け焼き。うまい。この店も混雑していて、出てくるのに時間がかかったので、食べ終わって外に出ると、もう〈MANDALA-2〉の入場が終わっていた。ナカに入ると、『ぐるり』の五十嵐さんが席を取ってくれていた。


今日は加藤千晶の単独ライブ。下北沢〈mona record〉のときの4人にチューバ、マリンバ、バイオリンが加わり7人編成だ。加藤さんもキーボードではなくピアノだ。この人の歌にはピアノがよく合う(アンコールのときのソロは絶品だった)。休憩なし1時間半ほどのライブだったが、とてもいい雰囲気で、アンサンブルを楽しめた。「南雲通り交差点」はまた別のアレンジになっていた。なぜか子供連れの客が数組いたのも、ライブハウスでは珍しい。終わって、〈上々堂〉の石丸さんから加藤千晶さんを紹介される。加藤さんのコトを書いた『ぐるり』を手渡す。「一箱古本市に来てください」とも。ウチに帰ったのは11時半だった。