雨の日の青空古本市

8時半起き。朝飯のあと、書類を捜す。10時半に出て、千代田線で代々木上原小田急線で鶴川へ。何度か来たことがあるのだが、ナニもなかった駅前に、駅ビルも含めていろんなものができていて驚く。次のバスまで時間があるので、〈啓文堂書店〉を覗く。『ユリイカ』11月号(特集「文科系女子カタログ」)を買う。近代ナリコさん、浅生ハルミンさんが登場。座談会の野中モモさんは、『ミニコミ魂』(晶文社)でお世話になった。あと、高田里恵子平田順子ナゴム本を書いた人)に注目。しかし、男性の書き手を「僕達の好きな文科系女子!」なるアンケートだけに閉じ込めておかず、2、3人に文科系女子論を書かせてほしかったという気がする。


バスに乗って、和光学園へ。門から校庭へのアプローチが長く、なかなかイイ雰囲気の学校だ。校庭では生徒が沖縄音楽のコンサートをやったり、出店が出たりしてるが、例によって古本市に直行。昇降口近くのロビーでやっていたが、うーん、冊数が少ない、本が新しすぎる。150円のものを3冊買うが、2冊はすでに持っているものだった。またバスに乗り、鶴川まで戻る。踏切を渡ったところに古本屋があったハズ、と行ってみるが、閉まっていた。駅前の定食屋で昼飯食って、電車に乗る。完全にカラブリだったけど、べつに悪い気はしない。


代々木上原→表参道と乗り換え、神保町に着いた頃には雲行きが怪しくなっていた。今日から「神田古本まつり」だ。靖国通りに出ている古本屋のワゴン(メイン会場よりコッチのほうが好き)を覗き、〈岩波ブックセンター〉で買い逃していた『映画論叢』第12号を買い、隣の会場で本を見ようとしたら、古本屋さんたちが棚に透明のシートをかける作業をしている。携帯で話していた人が、本部に向かって「天気予報会社から連絡で、あと20分で雨が降るって」と伝えている。そうか、もう降るのかと思いながら、シートの上から本を覗く。すずらん通りに移動し、「神保町ブックフェスティバル」の出版社のワゴンを見る。東方出版のところに、大阪のIさんがいたので挨拶。加藤豊『マッチラベル博物館』、8000円が半額だというので買う。マッチラベルの本だから出たときに買っておこうと思ったのだが、金欠でちょっと手が出なかったのだ。こんな値段で買ってすみません、加藤さん。地方・小のところで、なんだか液体の入ったコップを持ってすでにゴキゲンの畠中さんにも挨拶。あと、ゆまに書房のトコには、ウチの弟もいました。


そうこうしているウチに、パラついていた雨が本格的に降ってくる。会場も一時撤収の伝達が出たので、〈三省堂書店〉に入る。誰もが考えることは同じで、ここの古本市はものすごい人込み。古本は諦めて新刊をと、4階を一回りして下に降りる。一階の奥に、『チャルカの東欧雑貨買いつけ旅日記』(産業編集センター)のフェア台があり、ピエ・ブックスやプチグラの雑貨モノの本と並んで、小著『チェコマッチラベル』も平積みされている。ぼくも「文科系女子」の仲間入りかしら。そのあと、古書会館へ。地下の古書展は高級感あふれるが、手は出ない。


4時前に2階へ。未来社の小柳暁子さんが企画した「テクストの祝祭日」というイベントで、松本昌次さんの「戦後文学と編集者」というトークを見るのだ。いつものトークとは90度向きを変えて、横長に座席を設定していた。客は30人ぐらい。開演前に、小柳さんに松本さんを紹介される。松本さんは未来社で30年間編集をし、その後、影書房を興す。今日は、『図書新聞』の米田綱路氏が聞き手となって、現在刊行中の「戦後文学エッセイ選」の著者たち(花田清輝竹内好富士正晴上野英信井上光晴ら)のことを聞いていく。米田氏は若くて(1969年生)、温厚そうで、優秀なインタビュアーだと聞く人だが、あらかじめ筋書きを綿密につくっておいて、その通りにハナシを進めようとする。コレはインタビューのやり方で、聴衆を集めての談話にはちょっと向かないのではないか。松本さんは「なるべく堅苦しくなく……」と云っているのだが、そういう持っていき方だから、必然的に思想的・抽象的なハナシに偏っていく。むしろ、最後に余談として話した「書肆ユリイカ」の伊達得夫のこととか、質疑応答で触れた花田清輝の人間的エピソードのほうがおもしろかった。松本さんは「編集者なんてたいした仕事じゃないですよ」と繰り返しおっしゃっていた。このコトの意味を考えておこう。聞きにきていたEDIの松本八郎さんと藤城雅彦さんと、会館の入り口で別れてウチに帰る。出歩いて疲れたのか、ヨコになって少し眠る。


夕飯は、ブタのカシラ肉とマイタケ、キムチを炒めたもの。かなりウマイ。積んであった『エルマガジン』のバックナンバーをパラパラ見て、必要なページを切り抜く。この雑誌の一本一本の記事がつくりこまれていることに、改めて気づく。レイアウト優先でもなく、テキスト優先でもなく、同時進行で誌面がつくり上げられているカンジがいい。同じ版元の『ミーツ・リージョナル』もよくできた雑誌だが、エルマガに比べると、取り上げる対象へののめりこみ方がいまいち浅い(だから、ミーツのほうがよく売れるのだろうが)。昨日の日記を書き、《やりすぎコージー》を観たら、すぐに眠くなった。