「一部屋古本市」の三日間(その2)

8時に起きる。昨日、大人数の前で喋りすぎたせいか、声がしわがれてしまう。倉庫の段ボール箱を引っ張り出し、売れそうな本を選ぶ。自転車に段ボール箱をくくりつけ、前の籠には本の入った紙袋、首からは資料などを入れた袋をぶらさげて、よたよたと谷中へ出発。あとで、退屈男さんと歩いていたときに、ぼくの自転車の後ろにヒモを巻いているのを見て、「最近、あまり見かけないですね、こういうの」と云われたが、このように重宝しております。もっと移動する本の量が増えると、台車が出動します(笑)。


アパートで、値付けを行なう。40冊ぐらい追加しただろうか。その合間に、未読だったので売ろうか迷っていた、谷沢永一『人間、「うつ」でも生きられる』(講談社)を流し読み。自身のうつ体験を語ることで、うつの人へのエールを送る、という構成なのだが、じつは『雑書放蕩記』(新潮社)をほぼ同じエピソードを語っているおり、ホトンドが自慢話。うつの人がこれを読んで勇気付けられるかははなはだ疑問だが、谷沢ファンにとってはそれなりにオモシロイ。


12時に一度アパートを出て、〈一力〉でラーメンを食べて、ウチに戻り、追加の本やCDを持ってまたアパートへ。それらの値付けを一通り終えたところで、2時前になった。最初にいらっしゃったのは、「退屈男と本と街」(http://taikutujin.exblog.jp/)の退屈男さん。「一箱古本市」リンクなどでさんざん世話になっているが、会うのは初めて。おお、アナタでしたか。日暮里駅の構内で、古本のワゴンを覗いてきたと云い、収穫を見せてくれる。続いて、「本読みの快楽」〔はてなでは「新・読前読後」〕(http://d.hatena.ne.jp/kanetaku/)のかねたくさん。あと2人来るので、しばらく待つ。すると、「書物蔵」(http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/)の書物奉行さんが登場。そして、さんざん迷って、セキグチマミコさんが登場。セキグチさんは、本屋で『チェコマッチラベル』を見かけて応募された方で、「猫のいる街」(http://www002.upp.so-net.ne.jp/necomachi/)というサイトをやっておられる。「That's a no no !」というバンドでドラムを叩いているそうで、ライブを収録したCD—Rをいただいた。


昨日と同じ説明をしたあとで、30分遅れで開始。今日になって書物奉行さんに向いているかなと思いついて、一度しまった段ボール箱を引っ張り出して見つけておいた、大岩好昭『来し方:移動図書館と共に』(里艸)が、開始直後にちゃんとその人の手に収まっていたのは、(阿佐田哲也の賭博小説的に云えば)狙った目がドンピシャに開いたような感じで、気持ちいい。昨日、テーブルの反対側が狭かったので、少し広げておいた。それで回りやすくなったせいか、みんな動きながら本を見ていく。それで、昨日より早めに本の選択が終わったようだ。各自、精算していただくと、合計18冊、1万500円になった。お買い上げ、ありがとうございます。


みんなで〈NOMAD〉に行き、昨日と同じく、本や雑誌を見せての雑談。虫明亜呂無宛ての植草甚一ハガキなどを見せる。書物奉行さんには、昭和41年の明治古典会の落札記録帖を。ノドが不調なので、あまり喋れずにすいませんでした。2時間ほどで解散し、退屈男さんとセキグチさんと一緒に谷中銀座まで歩き、そこで別れて、ウチへ。


1時間ほどヨコになり、旬公と一緒に再び〈NOMAD〉へ。せわしないなあ。展示の前に数人のグループがいたので、ナニかと思えば、チェコ語を学んでいるヒトたちが一緒に見に来てくれたのだった。チェコ人の先生がとても喜んでいたとか。そのうち、ラデク・ランツさん(マッチラベル・コレクションの持ち主のお孫さん)と彼女のFさん、たまたま来日中のラデクの友人のチェコカップル(剣道をやっている)がやってきて、店内のチェコ関係率が異様に高くなる。みんなで浅草に行ってきたとのこと。ラデクはいまの会社を今月で辞めて、別の会社に勤めるコトになった。「かわいくてイイ感じの神社はない?」と訊くから、チェコカップルを案内するのかと思ったら、ラデクとFさんの結婚式の会場として探しているというのだった。國學院出身の旬公の目が光り、さっそく知り合いの宮司に聞いてみるというコトに。それにしても、神社で式を挙げたいとは、ラデクの日本好きは筋金入りだ。ともかく、おめでとう。


根津交差点の近くの〈スルタン〉というインド料理屋に初めて入る。大画面でインド映画を流している。チェコカップルの男性はベジタリアンなので、豆のカレー。ぼくたちは、マトンのカレーと、ビーフのカレー。ナンがでかい。全体的に美味しいし、どことなく日本っぽくない店内も気に入った。また来よう。根津駅でラデクたちを別れ、ウチへ。今日もたくさんのヒトと会ったので、疲れました。明日はいよいよ「一部屋古本市」の最終日。ノドが直っているとイイけど。