寄る辺なき人々のための場所

終戦記念日。工事の音はせず、道を走る車も少ない。資料を読みながら、メールをいくつか。「書評のメルマガ」の編集をしていると、12時になった。うどんに醤油をぶっかけて食べる。


このまま家にいると、うだうだしてしまいそうなので、資料本を詰め込んで、自転車で出かける。銀行や郵便局に寄ってから、〈谷中コミュニティセンター〉の図書室へ。月曜でほかの館はすべて休館だが、ココだけは日曜日が休みなのだ。ただし、それを知っているヒトが来ているため、狭い閲覧席は満席。ようやく端っこに座るが、椅子と椅子の距離がホトンドないので、椅子の背が触れたらしく後ろのオヤジに舌打ちされる。台東区荒川区の図書館には、行くところのない老人や涼みに来るホームレスが多いのだが、今日はいつも以上に殺伐としている。ぼくと同じ列の男が、後ろの席の男にぶつけられたと怒鳴りつけ、相手も負けずにこづいたりしていたし、児童コーナーの椅子に座った男が館員に注意され、「二度と来ねえよ!」と捨て台詞を吐いていた(そのあと、ぼくの隣の席に移動)。そんな雰囲気なので、ゆっくり読書という雰囲気でもナカッタが、仕事で使う資料に目を通すという事務的な作業には向いていたかも。


5時前に、雷が鳴り、雨が降り出す。止むのを待って、館を出る。〈幸洋軒〉でレモンハイと冷奴。ウチに帰り、資料本の続きを。集中できたおかげで、今日一日で5冊に目を通すコトができた。そのナカの一冊、青柳いづみこ『青柳瑞穂の生涯 真贋のあわいに』(新潮社)で、これまで、中央線文士の集まり「阿佐ヶ谷会」に場所を提供した人物としてしか知らなかった青柳瑞穂のことを詳しく知ることができた。青柳が仕事に精出す性格ではなく、生活費を妻の実家に頼っていたこと。創作を志しながらも、翻訳に甘んじ(戦前はそういう風潮があった)、それでいて「かんじんのフランス語の語学力には難があった」こと。終戦後、翻訳の需要が高まり、出版や連載が決まるが、出版社から入る金を家に入れず、骨董ばかり買ってたこと。なんというか、このダメさ加減に、ヒトゴトではないものを感じてしまった。


晩飯は、昨夜のカレー。昨日ヤマイモをすりおろしてカレーに入れることを提唱したのは、旬公でした。遅ればせながら、ご報告。そのあと、桂千穂脚本、長谷部安春監督《暴行切り裂きジャック》(1976)を観る。最初から最後まで、反道徳的でヒリヒリした感じが貫ぬかれている。殺人シーンにかかる音楽が妙にほのぼのしてたのが、合っているようで合わないような。


さて、いよいよ明日から、大阪〈calo bookshop and cafe〉(http://www.calobookshop.com/)で「チェコマッチラベル展」がはじまります。一昨日、石川さんより無事会場設営が終わったとのメールをもらいました。添付の会場写真を見ると、かなりイイ感じであります。復刻マッチやチェコの古本も販売していますので、お早めにお出かけください。8月27日(土)のトークショーも、まだ予約受付中です。どうぞよろしく。