ロードショーは上野に限る

朝、ポストに角田光代さんからのお手紙が届いていた。歩きながら読む。『古本道場』の関係者全員に出しているのだろうか。ホントにすごい方である。「モクローくん通信」読者のKさんよりハガキ。一箱古本市が終ってから「モク通」が届いたことへのお叱り。サイトや雑誌での告知に追われて、「モク通」がいちばん最後になってしまった。『日本古書通信』や『彷書月刊』を読まず、インターネットもやらないヒトにとっては、「モク通」が唯一の情報源なのだ。頑張らねば。


11時に仕事場へ。ヒトがいないと、仕事がはかどるか、まったくできずにサボってしまうかどっちかだが、今日はまあまあ。原稿を一本書き、著者の原稿を読んでゲラにする。5時半に仕事場を出て、上野へ。駅にアトレができてから、なんか人の流れが変わったなあと思う。先に映画を観る場所を確かめておこうと、〈上野東急2〉を探すが、駅から近いところではなく、不忍池に近いほうにあった。入れ替え制でなく、入口でチケットを買いそのまま入る昔ながらの映画館。まだ前の回の上映中なので人影はなく、受付ではあんちゃんが眠っていた。それを起こして、2枚買っておく。駅方面に戻り、「上野古書のまち」で時間つぶし。『大阪路線バスの旅』(トラベルジャーナル)を見つける。東京でこういう本があるのは知ってたが、大阪バージョンもあったのか。かんべむさし川崎ゆきお峯正澄朝倉喬司、堀晃と執筆者がディープ極まりない。もちろん買う。500円。


旬公から電話が入り、落ち合って上野公園へ。久しぶりにナカに入ったのだが、どんどんキレイで平板になっていく駅前と比べて、ココはやっぱり濃い空気を放っている。座っているヒトを眺めるだけでも、寝込んでいるホームレス、ビールを飲むおやじ、国籍不明のハデな服装の女性などとバラエティ豊か。しかも、植え込みにゾウやクジャクプレーリードッグのハリボテ(?)みたいなのが立っていて、夕方になるとそれが光るのだが、その光りかたがなんだかショボイのである。ナニがやりたいんだろう、一体。


そこから階段を下りると、真正面が〈上野東急2〉だ。ロビーでは3、4人待っている。入れ替え制じゃないから、映画のエンディングからもう入っているヒトがいるのだろうと、終ってからナカに入ると、まったく誰もいない。300席ぐらいあるが、まったくのガラガラである。ぼくたちの観た回の客は15人切っていたんじゃないか。さっきまで読んでいた小林信彦の『東京散歩昭和幻想』(光文社知恵の森文庫)で、「ゴールデン・ウィーク」というコトバは映画産業が全盛だった時代、連休中の配収がスゴイことから付いたとあった。いまでは、世間はゴールデン・ウィークなのに、この映画館は取り残されている。しかし、この映画館、最近のスカした「シアター」とは違って、実質本位の造りなので、スクリーンが大きくて見やすい。こういう映画館は好きだ。コレからロードショーは上野で観よう。もっとも、上映中に左右の「非常口」の灯が暗くならないのは、イマドキありえないが(他では自然に光量が落ちるようになっている)。


映画は《インファナル・アフェアⅢ 終極無間》。おもしろかったけど、これ、前作を観てないヒトにはさっぱりワカランだろう(ぼくもⅠしか観てないので、ちょっと判らないトコロがあった)。ようするに、すべてが前2作のつじつま合わせなのだ。細かい謎を全部解決しようと、いろんなエピソードを出してくる。ホントにここまで考えて、最初からつくってあったの? と聞きたくなる。前に座った老夫婦は、エンディングで「難しい……」と呟いていた。


終ってから、〈黒船亭〉へ。上野界隈では高級な洋食店と云われており、お値段もなかなか高級。ステーキ丼セットというのを頼むと、オードブルの盛り合わせとステーキ丼半サイズが出てきた。けっこう腹いっぱいになった。下を見下ろすと、中央通りの真ん中で地下鉄の工事をやっているのが見える。この数年、ずーっと工事中だ。湯島まで歩き、千代田線でウチに帰る。髪が伸びていたので、旬公に散髪してもらうと、すっきりした。明日は東京古書会館の「アンダーグランド・ブック・カフェ」に寄ってから、「東京スムース友の会」だ。けっきょく出席者は37人になった。ドタキャンがあったにしては、まあまあの人数である。