「月の輪書林古書目録」を読む

4時に寝たので、眠い。起きぬけ一発目の作業は、地図の郵送。関係者に二部ずつ封入する。「モクローくん通信」読者の皆さんには、来週発送します。もう少しお待ちを。『ユリイカ』4月号の特集「ブログ作法」に書いた文章は、予想通り、ほとんど反応がナカッタのだが、今日になって、「ホッチキスカンガルー」(http://d.hatena.ne.jp/sniff/20050412)さんが、特集が「正直にいって、ぜんぜん何の話なんだか分らなかった」なかで、ぼくの書いた一文に「共感できた」と書いてくれた。たしかにこの特集、どのあたりに読者を設定しているのかよく判らない。冒頭の座談会は、固有名詞にまったく説明がついていないが、注をつけるなり、参照ページを示すなりしてほしかった。こういうときこそ、デジタルメディアとは違う、紙の媒体の特性を生かすチャンスだったと思うのだが、それをまるまる放棄してしまっているのは、どうしたワケか。「ブログ作法」の前に「雑誌作法」をやったほうがイイのでは。


11時過ぎに出て、〈古書ほうろう〉で地図を300部受け取る。コレを持って、千代田線に乗り込む。車中読書は、月の輪書林古書目録14『田村義也の本』。これまでの目録であれば、竹中労なら竹中の著作に関連する文献や、そこから連想できる本を合わせて行くのが「月の輪流」なのだが、今回は、田村の装幀本、書き込み本、旧蔵書を分けて載せている。その整然さは、田村の蔵書がすでに大学や市場に出回っており、目録の本が「残り物」であることへの忸怩たる思いからきたのでは、と最初は思った。しかし、田村と言葉を交わしたかもしれないという「妄想」だけで、一誠堂の小梛精以知の旧蔵書が登場するアタリから急速に面白くなっていく。次章は、田村と田所太郎を通じてつながる(?)長岡光郎の旧蔵書。このヒト、花森安治の旧制松江高校での後輩にあたるのだ。いまだ着手していないとはいえ、松高時代の花森に興味のあるぼくとしては見逃せない。そして最終章は「『田村義也』の本」。これは書き込み本でも旧蔵書でもない。月の輪さんが「田村義也」から連想した本を集めているのである。民俗学、部落問題、明治風俗史、文学……と広がるその目録は、田村の蔵書を使わずして、田村の仕事の幅広さを見渡すものになっている。「田村義也の世界をつかんだ」という月の輪さんの自信がうかがえる。入魂の13号とはまた違うスタイルで、ぼくはけっこう気に入った。


表参道で降り、〈古書日月堂〉へ。佐藤真砂さんはまだいらしてなく、隣のお店に地図を託して出る。仕事場に行き、もろもろ。「書評のメルマガ」を仕上げて発行する。6時に出て、神保町へ。古書会館でセドローイチローのコンビに会うことになっていたが、仕事が終らないようなので、一足先に、その近くの〈YuriKayato〉へ。「餃子と世界のビール」という看板が以前から気になっていた。ナカに入ると、ソウルのレコードジャケットがたくさん飾られ、音楽もソウル。そして世界のビール。なのに、つまみは餃子というフシギな店。チェコのビールを飲み、餃子を食べていると、二人が到着。イチローくんが開口一番、「尾の店、昨日も来て、12時半までいました」だと。


先日の出雲での買い取り、最終結果が出たので、そのお金を受け取る。合計でほぼ40万、二人の取り分と市場の手数料を引いても、26万ほど残った。予想より高く売れたという。イチローくんが出雲で、深夜までかかってヒネリを入れてくれた成果だろう。売上伝票を見せてもらったが、「竹中労 他 3冊」とか、「ボクラ小国民、大正美人伝 他 2本口」とか、「映画関係 3本口」というように、まとめられていて、興味深い。自分が古本屋だったら、「横山やすしたいめいけん 他 2本口」「中公・学術文庫 他 3本口」あたりには、思わず札を入れてしまいそうだ。ともあれ、コレで一区切りついた。二人ともお疲れさまでした。


出雲での買い取りはまだ二週間ほど前のコトだけど、すでに遠い昔の思い出になりつつある。この日記では触れられなかった、岡山と出雲のレンタカー屋のヒドイ対応とか、ぼくの母親のオモシロ発言とか、新築の家に本だけ運び込む異常さとか、松江の屋形船の客、あれはナニモンなんだとか、いちいち思い出しては大笑いする。そのほかに、ココには書けないが、横腹が引きつるようなハナシが続出。ひとつだけ云っておくと、セドローくんは「右翼系古本屋」として認知されつつあるらしい。近々、保守系ケーブルテレビ(?)にも出演するらしい。話をするのが楽しくて、名残惜しくて、けっきょく11時半まで。


ウチに帰ると、月の輪書林さんから目録注文へのお礼のファックスが。「次号は平凡寺。三脚を買って写真版にチャレンジします。妄想は色々ひろがりますが、手持ちで遊んでみます。我楽他宗にならって三十三号と飛ばします。1000部つくって500部の発行予定。いや500部限定にした方が面白い?」。さっそく次に向けて、動いているようです(実際にできてみたら、まったく違うテーマになってるかもしれないが)。一日中、古本のハナシができて、とても楽しく過すことができた。毎日こうならイイのになァ。