部活動みたいなカンジ

11時に仕事場へ行き、『進学レーダー』の残り一本に手を入れて、送る。そのあとは、「本コ」次号の準備。午後の打ち合わせで、大ざっぱな目次が決まったので、続けざまに依頼を出す。そのうちの一本について、29日に京都で著者と打ち合わせするコトになった。ホントは、前日夜に大阪である人にインタビューして、この日には東京に帰るツモリだった。その前に岡山−出雲と動くので、とても体がタマランと思ったからだ。しかし、やはりココまで来て「スムース友の会」に出ないワケにはいかないだろう。うらたじゅんさんに電話して、一夜の宿を乞い、ついでにうらたさんも会に誘う。


関西といえば、その二週間後にも、取材がらみで大阪に行く。以前に、京阪神の出版社・書店など、出版業界関係者の研修・懇親会である「勁版会」でナニか話すよう、幹事の烏本舗・川辺佳展さんに云われていたのを思い出し、連絡すると、スグに日時が決まってしまった。以下、要項です。本に興味があれば、誰でも参加できるそうなので、気が向けばいらしてください。

■テーマ : ぼくが「小さなメディア」にこだわる理由
南陀楼綾繁(=河上進
雑誌「本とコンピュータ」を編集するかたわら、ミニコミ、フリーペーパー、メールマガジン、ブログなど、アナログ/デジタルにかかわらず、一貫して〈小さなメディア〉に携わってきた。その経験をもとに、これからの「出版」について、ささやかな提言をおこなう。
■日時:4月8日(金) 19:00開始
■場所:<大阪会館 第一会議室> いつもと会場が違います。要注意!    
http://www.o-kaikan.com 
phone : 06−6261−9351  
541−0053 大阪市中央区本町4−1−52
本願寺津村別院(北御堂)の石垣の中 ※会場へは18:30頃から入場可
◆参加費 : 会場費を参加聴講者で頭割り◎終了後懇親二次会・会費割り勘


ま、「提言」というほどポジティブなハナシができるかは、判りませんけど。7時前に仕事場を出て、南北線駒込へ。山手線に乗り換えるとき、間違えて反対方向に乗ってしまう。田端で降りて、また戻ってくる。そんなこんなで、ちょっと遅れてP社へ。Oさんが分類した資料を見ながら、どういう構成にしていくか話し合う。それと、どれを翻訳してもらうかも決める。ちょっとずつ前に進んでるカンジ。Oさんは「毎週ミーティングしてると部活みたいですね」と云うが、若いヒトばっかりのP社にいると、サークルの部室にいるような気分になる(9時過ぎてるのに、まだまだ大勢残ってるんだよなあ)。


ウチに帰ると、〈荻文庫〉から本が届いている。志水松太郎『売れて行く本の話』(峯文荘発行、栗田書店発売、昭和11)3000円。タイトルがオモシロそうなので、注文してみたが、大当たりだった。志水は峯文荘の経営者で、前年に『出版事業とその仕事の仕方』という自著を出している。本書はその姉妹編で、前著がどのような過程を経て世に出て、どれだけ売れ、返品がどれぐらいあったかを、詳細に記している。つまり「売れて行く本」とは、自分の本のコトなのだ。自分で出した出版広告を転載したり、印税の小切手を図版で入れたりと、まったくいい気で手前味噌な本ではあるが、印刷部数、印税、売上、返品部数などのデータを隠さず書いているので、戦前の出版流通を知るためにとても役に立つ。発売元(取次)の栗田書店との契約についても、詳しく書いているようだ。


さらに、「出版業絶対成立法」という節では、出版社を立ち上げるために必要な資金、支出と入金のバランス、返品のタイミングなど、これだけ判っていれば絶対成立するという基礎知識をまとめているし、「新本と夜店風景」「同人雑誌の作り方と経営」「図書博物館を建設しては」などの節も興味深い。文章も読みやすい。国会図書館で検索すると、峯文荘(ほうぶんそう)は昭和12年には「大日本出版社峯文荘」というご大層な社名になっているが、出している本はほとんど、手紙の書き方、広告のつくりかた、人生読本などの実用本である。こういうタイプの版元は大好き。この本、実家に持って帰って読もう。


雨が止んだので、久しぶりに旬公と夜の散歩。田端新町の〈ブックマーケット〉まで歩く。雨上がりで空気が澄んでいるのか、電車の音が、いつもより響いてくる。前にも書いたかもしれないが、この道は、左右をJR(新幹線含む)と京成線の線路にはさまれており、最高のトレインビュー・スポットになっているのだ。


仕事の合間に、ビデオで豊田四郎監督《泣蟲小僧》(昭和13)を観る。原作は林芙美子。母親に邪魔者扱いされた少年が、母親の妹たちの間をたらいまわしされる。少年の哀しみと、それを判ってやる余裕さえない都市の細民の生活をこまやかに描いている。売れない小説家の次女の夫が、改造社らしき出版社に原稿の売込みに行くシーンもある。 隣の部屋で編集者が売れっ子作家に原稿を頼んでいるのを聞きながら、ひたすら待つしかない辛さ。郊外に住む妹を訪ねて、少年と二人とぼとぼ歩く横を電車が通る場面もよかった。あれは、ナニ線なのかなあ? また、この映画、河野鷹思が美術を担当しているが、どの辺りまでディレクションしているのだろうか(ポスターも描いている)。豊田四郎の映画ははじめて観たが、他の作品も観たくなった。いま、〈シネマアートン下北沢〉(http://www.cinekita.co.jp/)で上映中の特集「監督 豊田四郎」には、ナンとか時間をつくって、1、2本観ておきたいなあ(とくに戦後のコメディ)。


【今日の郵便物】
青土社より 道場親信『占領と平和 〈戦後〉という経験』青土社、4200円
道場氏は大学時代の知人。一時期、同じサークルにいたこともあった。いまでも早稲田の古本屋街では「顔」らしい。その彼の初の単著。本文720ページ(うち50ページが注)、参考文献30ページというボリューム。帯によると、「〈戦後〉はいかにうみだされ、どのように生きられてきたのか」がテーマらしい。全部読み切れるか自信がないが、少なくとも第四章「ベトナム反戦運動パラダイムの革新」はじっくり読みたい。
★『クイックジャパン』マンガ特集
★古書目録 萩書房
★K美術館さんより、『BRUTUS』で近代ナリコさんが書いた、金沢の古書店ガイドのカラーコピーが送られてくる。同時に『青春と読書』の旬公の担当さんからもファクスで送っていただく。お二人ともありがとうございます!
〈近八書房〉は8年ほど前に行ったと思う。〈ダックビル〉と〈あうん堂〉はチェック済み。〈やまくら書房〉にも行ってみたい。この記事にはないが、金沢の古書店(オンライン専門も含む)の共同のサイト「おてんこ」(http://www.otenco.com/)は以前に『彷書月刊』でちょっと紹介したことがある。