「熱」は交互にやってくる

朝、出掛けにポストを覗くと、中村よおさんの『トオリヌケ・キ』が届いていた。これ持って、電車に乗るのが楽しい。よおさんの紹介するCDはどれも聴きたくなるものだが、今回はブライアン・ウィルソンの『スマイル』(ワーナー・ジャパン)だな。なんとあの幻のアルバムを、全曲ニューレコーディングしたという。こんなの出てるなんて、知らなかった。あと、高田渡トリビュートも発売されたようだ。記念ライブに行けなかったのが残念。ふだんは本のことを優先に考えているが、CDのことを聞けばレコード屋に行きたくなり、久しぶりに映画館に行けばまた来たくなる。本熱と音楽熱と映画熱が交互にやってくる。1996年ごろ、ミニコミ『日曜研究家』で「帝都逍遙蕩尽日録」を書いていた頃は、毎号「熱」の順番が入れ替わっていたが、最近は本のコトだけで時間もお金も精一杯である。


仕事場に行き、次号の台割を引く。まだ仮とはいえ、そろそろこの時期がやってきた。午後に進行の打ち合わせ。夕方出て、渋谷へ。某校図書館の取材。そのあと、Iさんが國學院大學の書籍部に連れて行ってくれる。ここは新刊書店なのに古本が置いてある! 折口信夫=釈超空の著作や関連書が多い。その上、文庫本コーナーでも、新刊に混じって、古い中公や岩波文庫が古本として売られているのだ(値段の帯が掛かっている)。この売上は誰のものになるのか、とても気になる。


渋谷まで歩き、山手線でウチに帰る。bk1からの荷物が届いていた。ピエ・ブックスの『エクスポジション・ドゥ・ビュバー』と『海月書林の古本案内』。前者は吸い取り紙のコレクション。ぼくが持っている絵柄も一枚収録されていた。後者は、ここ数年出ている「ビジュアル系古本本」の中では出色。「オンナコドモの本」に浅くではなく、きわめて深く突っ込んでいる。


晩飯食べた後、ドラマ(日本テレビ一番大切な人は誰ですか?》)を見ながら、石神井書林の目録を見る。山名文夫『カフェバー喫茶店広告図案集』が15万7500円で出ていて、ぶっとぶ。誠文堂のこの職業別広告図案集は、以前にまとめて出たときに買ってある(そのときは一冊5000円ぐらいだった)。山名もたしか買ったはず、とその棚を見るが、山名の巻だけない。ホントに買ったのか自信がなくなってくる。以前、山名のコトを調べるのに仕事場に持っていった気がする。なんにしろ、こういうヤツに掛かっては15万の価値のある本も宝の持ちぐされだ。今日届いた岡崎さんからのメールに、「石神井の目録が届き(どうも、いつも林哲夫さんのところより、ぼくのほうが一日遅く届くみたい)ほしいもの、たくさんあれど、どうにも手が出ません。目録送ってもらうの悪いから、せめて2、3冊買いたいのですが」とあったが、同感。欲しい本で1万円以下のものがないのがツライ。林さんのところに目録が一日速く着く、というのは、ほかの書店の目録でもそうで(日記で触れられるのですぐ判る)、フシギに思っていた。関西のほうが先に発送されるのか、それとも林さんが上客なので早いのか、コレは「モクローくん通信」で探究してみる価値があるかも。


必要あって、呉智英『読書家の新技術』(朝日文庫)を再読。元版(単行本)を読んだのは、高校3年生の終わりごろだった(はっきりしないが)。いま読み返すと、いろいろ感慨にひたるのだが、書き出すと長くなりそうな気がするので、今日はやめておこう。そのあと、読みかけだった堀切直人『本との出会い、人との遭遇』(右文書院)を最後まで読む。この本、早稲田の〈文献堂書店〉のことが何度も出てくるので、「早稲田古本村」関係者は必読。


アンケート、今日もお一人送ってくれました。ありがとうございます。


【今日の郵便物】
板祐生出会いの館より  来年の「絵暦」をいただく。稲田さん、いつもの達筆のお手紙。西伯町も町村合併で「南部町」になってしまったのだという。どっから出てきた地名だろう、コレは。東京で人に会うとき、さんざん「西伯町に板祐生というすごい孔版画家&コレクターがいてね」と宣伝してきたのに、町名が変わるとはヤヤコシイ限りだ。「日本海新聞」10月24日の社説(?)も同封。UBCの「本の街のガリ版展」について。祐生のことも出ている。