名前をよく見る日

朝刊で、SF作家の矢野徹氏が亡くなったことを知る。81歳。「日本SF界の長老」という云い方をよくされていたが、SF全盛期にはまだ40〜50代だったんだなあ。それだけ「若い」世界だったのだ、当時のSF界は。80年代終わりに、『怒りのパソコン日記』(河出書房新社)など一連の日記本を出していた。あとからドカドカ出るパソコン体験物の本としては先駆的だったと思う。


仕事場であれこれ。昨日突然、ここ一年ぐらいのメールが消えてしまい、ボーゼンとする。自宅のマシンにはまだ残っているからイイけど。しかたないので、システム管理者に教えてもらって、サーバーに残っている一か月分をダウンロードするが、クズメールばかり大量にあるのでたっぷり30分以上掛かる。


神保町に出て、〈岩波ブックセンター〉で『神田神保町古本屋散歩』(毎日ムック)を見つける。まだ送られてこないので、一冊買ってしまう。ココで、ぼくは千代田線沿線の古本屋についての記事と、旬公と共同で世界の古本屋という記事の2本をやっている。時間がなかったワリには、それなりに頑張ったと思うので、愛着もひとしお。岡崎武志さんが巻頭文、座談会、中央線沿線といつもの通り大活躍。東横線沿線は濱野奈美子さん。プロフィールに「古書業界のマドンナ」とあったが、こちらも対抗して、「古書業界の珍獣」とすべきだったか。ほかに、河内紀さん、浅生ハルミンさんが登場。前年までのセンスのない表紙と違い、黒バックのシンプルな表紙に。売れてくれるとイイなあ。


そのあと、〈書肆アクセス〉に行き、畠中さんと雑談しながら、『本の雑誌』を手に取る。買う前にいつも「坪内祐三の読書日記」を立ち読みするのだが、突然自分の名前が出てきてビックリ。安食文雄三田村鳶魚の時代 在野学の群像と図書館体験』(鳥影社)に、池田文痴菴の総合的な研究を望むとあったのを引き、「よし、がんばるんだ、南陀楼綾繁君」と。ありがたい、とともに、やらなきゃなあという気持にさせられた。しかし、この部分、読者にはちんぷんかんぷんだろうな。


「本の運び屋」こと「リコシェ」(http://www.ricochet-books.net/index.html)の柳ヶ瀬和江さんと阿部麗奈さんにアクセスで会い、〈ぶらじる〉で取材。お二人が親子であること、話し始めて一時間近くたって、ようやく判る。そう云われればたしかに似てるのだが、とにかくヒトの顔からナニか読み取る能力に欠けてまして……。


ウチに帰ると、漫画屋から『レモンクラブ』と『コミックMate』が届いていた。後者はこの号からA5判と小さくなった。表紙は同じなのに、ずいぶん雰囲気が変わるもんだよなあ。このMateの塩山芳明「新・嫌われ者の記」(これがまた字が小さい!)で、30行近くにわたって南陀楼の話題が。この日記で「東京人」にイチャモンつけたことに触れ、単行本が印税ナシの「今の所はその程度の扱いをされる物書き」なのにケンカするとは、とある。大丈夫ですよ、「東京人」編集部はダレもネットでナニか調べたりしないみたいだし……(現時点で、謝罪も言い訳も反論もまったくナシ)。そのほか、『ナンダロウアヤシゲな日々』がメディアであまり取り上げられなかったことを、「内容もだし、彼の同業者への奉仕ぶりからして(勿論、元々見返りなど考えないアホだが)」意外だと書いてくれているが、マイナーな書き手が地方出版社から本を出す場合にはこの程度の反応が普通じゃないでしょうか。塩山さんの『嫌われ者の記』があれだけ取り上げられたのは、まあ例外でしょう。


今日は、「まぼろしチャンネル」(http://www.maboroshi-ch.com/)の更新(7月のハナシをいまごろ書いている。いつも遅れてすみません)もあり、自分の名前を多く見る日だった。以前やった仕事が掲載されると、なんだかその日はよく働いた気になるのだが、ただの錯覚です。でも、ちょっとやる気が出た……と日記には書いておこう。


【今日の郵便物】
★古書目録 渥美書房、荻文庫、吉野古書目録