恐怖のノスタルジー

午後、銀座の〈風月堂〉で枝川公一さんと待ち合わせ。企画の相談。終わったあと、閉まる直前の〈三洲屋〉でミックスフライ定食。神田駅で降りて、〈ブックファースト〉へ。このチェーンでは、渋谷店の次に気に入っている店。といっても滅多に寄らないのだけど。田中啓文『落下する緑 永見緋太郎の事件簿』(東京創元社)と奥成達ながたはるみ『なつかしの昭和30年代図鑑』(いそっぷ社)を買う。前者はジャズマンを探偵役にしたミステリ。


後者には「伊豆 昭和30年代村」会員権の募集チラシが挟み込まれていた。2008年オープン予定。一口100万円。「死ぬまで生きがいのもてる介護の村」「フリーター対策として働きがいのある村」「自然環境を取り戻す昭和30年代の村」「住人が来客して、もてなす癒しの村」などとある。ウィークリーマンションの「ツカサ」の社長みずからの企画らしい。サイト(http://www.222.co.jp/s30vil/)には、このような文句が。

例えば、お年寄りには日がな1日縁側に座ってもらい、来園した子供達のために竹とんぼを作ってもらう。子どもたちにはベーゴマやゴム段とびで遊んでもらう。公園には紙芝居のおじさんがいて、子ども達が集まっている。道路にはチンチン電車が走っている。まずは、この村に住む人を「雇う」。お年寄り、定年退職をした人、身よりのない人、親から見捨てられてしまった子どもたちなどを「住人」という社員の形で雇うのだ。彼らには村に住人役として住んでもらうわけだから、当然、家賃はタダである。その代わり、「住人」たちには昭和30年代当時のままの姿、暮らし方をしてもらう。昭和30年代の日本を再現したような村を、ひとつの自治体として作り上げる。
これが私が考える「昭和30年代村計画」である。この時代は、まさに私の少年時代。そのせいか、「夕焼けの詩」を読むと懐かしさがこみ上げてきて、胸がいっぱいになる。そこで思いついた。我々の世代にとって、一番のテーマパークは、あの時代の日常生活を再現したものではないか。

キ、キモチわるい。まるで、藤子不二雄Aが描くような、グロテスクなノスタルジーの世界じゃないか。しかし、コレを見て「自分も住みたい」と思うヒトがけっこういそうな気がするので、もっとゲンナリする。