暑い国から帰って来た夫婦

【前説】
今日の記述から、いきなり旬公が登場しますが、この日に台湾に着いたワケではなく、一緒に日本から行きました。ウェブで二人とも留守だと公言するとマズイかなあと思って、そうしてみたんです(そのおかげか、留守宅は無事でした)。こないだのスマトラ沖地震で、スウェーデン政府が行方不明者の情報公開をかたくなに拒んでいるのは、ネットやメディアで流すコトによって留守宅に泥棒が侵入する恐れがあるのだとか。ま、その当否はともかく、このニュースがアタマにあったので、ちょっと情報を伏せてみたワケです。以下、本文。


朝7時半に起き、レストランで朝食。部屋に戻り、荷物をまとめて、ロビーに降りる。荷物を送るため、ビジネスセンターに行くと、奥のパソコンでなにやらやっている白人が。カウンターの上を何気なく見ると、伝票に「L BLOCK」とサインしてあった。おお、ローレンス・ブロック氏ではないか。台北ブックフェアのゲストで、ダメもとで取材のオファーを出していたが、やはりスケジュールが合わないということで諦めていた。しかし、昨夜のレセプションにも出席していたし、目の前にいるのだから、アクションを起こすべきだったろう。だが、いざとなると、小心者の本性が出てしまい、「彼の本を持ってきたけど、さっき日本に送ってしまったしなあ」と声をかけずじまいだった。あとで旬公に云ったら、「ナンだ、知ってたらアタシが話しかけたのにぃ」と云われたが。


チェックアウトしてから、MRT(新交通システム)の駅まで歩く。今日の台北は、暖かいというより暑い。切符を買うと、わずか120円なのに、テレホンカードみたいなチケットが出てくる。その表面の写真を見たら、ぼくがいちばん嫌いな生き物だったので卒倒しそうになる。なんで切符に……。慌ててもう一枚買って、旬公に取り替えてもらう。途中、2回乗り換えて、台北のほぼ真北の「奇岩」という駅で降りる。旬公のある探し物に付き合い、無事発見して、また駅に戻ってくる。時間がないので、MRTを途中で降りて、タクシーに乗って、ホテルに戻る。預けた荷物を受け取り、リムジンバスに乗り込み、空港へ。


2時前にはチェックインを済ませ、ナカに入る。あまり売店がなさそうなので、小さな書店でお土産(台湾の有名な建造物のペーパークラフトが、一枚に収まっている絵葉書)を大量買いする。隣の軽食レストランで、焼きそばみたいなのを食べるが、化学調味料(たぶん味の素)がきつくて辟易した。そのあと、ゲートのほうに歩いていったら、免税店などがたくさんあった。残りの金で、素食(ベジタリアン)料理の本を買う。


離陸は3時40分。乗っている時間は2時間ちょっとなのに、成田に着くのが7時半というのは、時差があるから当然なのだが、どうも感覚としてつかみにくい。機中の読書は、ドナルド・E・ウェストレイク『聖なる怪物』(文春文庫)。オモシロイ。冒頭から、主人公の異常な性格がビシバシ伝わってくる。ちょっと早めに成田に着陸。荷物を受け取り、京成スカイライナーで日暮里。タクシーでウチへ。9時過ぎに到着。日本に帰ると落ち着くけど、この寒さはなんとかならないか。さっきまで暑い思いをしていただけに、よけい寒さがこたえる。


〈古書ほうろう〉に顔を見せに行き、ラーメンでもと思って不忍通りを歩くが、一軒も開いてない。閉まるの早いなあ。前に行ったイタリア料理屋がまだ開いていた(ラストオーダーのギリギリだった)ので入り、パスタ、リゾットなどを食べる。ジャガイモのスープが胃の腑に染みわたる。ウチに帰り、さっきレンタルしてきた、YUKIのシングル[JOY]を聴きつつ、荷物を整理したり、洗濯したりする。やっぱりこの曲、好きだなあ。打ち込み初期の雰囲気を再現しつつ、時代が一回りしたことで、いまならではの新しさも生まれているようだ。その点、一緒に入っているリミックス3曲には懐かしさだけしか感じられなかった。明日からまた、雑誌の校了作業に戻らなきゃならないし、もう寝るか。


【今日の郵便物】
★古書目録 みはる書房
★『日本古書通信』2月号
八木福次郎×池谷伊佐夫トークの二回目を掲載。ぼくの発言は1、2箇所しかないし、ゲラも見てないので、名前を出してもらうのが申し訳ない。裏表紙の『BOOKISH』の広告にブッ飛ぶ。目立つところに2つも脱字がある(「イター」「−ジュ」)。まさに「イター」というカンジ。林哲夫さんの日記によると、交換広告らしいけど、コレはちょっと……。