待ちきれない人々

昨夜は、『本との出会い、人との遭遇』に触発されて、何冊かの本を拾い読みした。この本に出てくる、堀切さんが私家版で出した『冥府もぐり』(1970年)は、日月堂さんで見たコトがある。2回手をのばして、2回とも買わなかった。でも「日本の古本屋」で検索するとまだ在庫あるみたい。突如、買わねばという気になって注文を掛ける。寝たのは3時過ぎていた。


いつもの時間に仕事場に行き、あれこれ。昼飯は〈橘〉の生姜焼き定食。そこから道を渡ってスグのところにある〈麗文堂書店〉を覗く。この店の品揃えは、思想・哲学・民俗学などの研究書や文学評論の本が中心で、ぼく好みのヘンな本はあまりないのだが、パソコンに向かって調べていたテーマについてどんな本があるか、あるいは、いま進めている仕事に関する特集が『現代思想』や『ユリイカ』などのバックナンバーにあるか、などを一瞥するにはとても便利(あまり買わなくてすいません)。今日は、木部与巴仁伊福部昭 音楽家の誕生』(新潮社)を1700円で買う。


この本、1997年に出たがワリと早く品切れになったらしく、古本屋では滅多に見ない(同じ著者の『横尾忠則 365日の伝説』はよく出てるのだが)。そういう声に答えて、2年ほど前にボイジャーからオンデマンド版が刊行され、そっちは改訂されている様子だったが、なんとなく元版で読みたい気がして買わなかった。ただ、同じくオンデマンドで刊行された、本書の続編『伊福部昭・タプカーラの彼方へ』は買ってある。


仕事場に戻り、久しぶりに木部与巴仁さんのサイト(http://www.kibegraphy.com/ )を覗いたら、ボイジャーから出ていた2冊は、今年5月に合本として「本の風景社」からオンデマンド出版されていた。さらに、第三作『伊福部昭・時代を超えた音楽』も同じところから出ているではないか。コレはうかつだった。小西昌幸さんの「創世ホール通信」あたりにはきっと載っていただろうに、読み飛ばしたんだろうな、きっと。ともあれ、まず『伊福部昭 音楽家の誕生』から読むコトにしよう。


日月堂の佐藤さんからさっそくメールで在庫がある旨の返事。送ってくださいと返事を出した直後、気が変わり、表参道の日月堂まで受け取りに行く。3500円。佐藤さんから、「これ、古書モクローで売ったらどうですか?」と、戦前の落とし紙の封紙を数十枚いただく。数枚ずつセットにすればたしかに売れそうだ。ありがたく頂戴する。急いで表参道駅に戻り、神保町へ。靖国通りの古本屋の店先にやたらヒトが多いので、あれ、今日から古本まつりだったっけ? とのぼりを見ると、やっぱり明日からじゃないか。どうも待ちきれずに、そわそわと神保町にやってくる人がいるらしい。


東京堂書店〉で堀切直人さんと、右文書院のAさんと待ち合わせ。〈ルノワール〉で原稿を受け取り、その後、あれこれ話す。さっきの『冥府もぐり』をお見せして、版元の「VAMP団」というのはナンですか? 5冊まで予告されている「VAMP叢書」は何冊出たんですか? とお聞きする。答えはヒミツだが、ビックリして納得。Aさん、「ぼくはそれ、田村書店の均一台で400円で買いました」と。寡黙な印象の方だが、ただならぬ本好きらしい。堀切さんはコンピュータに一切触らないが、Aさんがこの日記のコトを伝えていたらしい。そういう場に書かれることを嫌うヒトもいらっしゃるので、一瞬緊張したが、いろんな人に会うことと書くことを同時にやっているのはアヤシゲさんらしいと云ってくださる。それとともに、それがずっと続けばオモシロイね、とも。飽きずにやります、はい。前に「サンパン」を送ったのだが、「この『店番日記』の人の文章はいいね」とも。セドローくん、誰からもホメられるなあ。花田氏の新雑誌でも連載はじまるみたいだし、彼の才能がちょっとねたましい。


前のお話では、三人で会って飲むということだったが、用事があるということなので、そこで解散。近くのコンビニで原稿のコピー取って、ウチに帰ろうとするが、今日は飲むつもりでいたので、なんとなくおさまらず、綾瀬へ。〈デカダン文庫〉に行くと、おじさんがさっそく『神田神保町古本屋散歩』の反響を話し出す。店に来る客が増えたかと思いきや、店の写真に映っていた本棚の本(車谷長吉古井由吉のサイン本)を見た地方の客が、電話で注文してくるのだという。「村上一郎の本も売れたよ」。うわぁー、写真に映ってる本棚をそのまま目録代わりにしてる読者がいるんだ。横尾忠則のポスター(深沢七郎の「夢屋」)も三人ぐらいから譲ってくれと云われたそうな。スゴイ。この週末は、こういうヒトたちが全国からやってくるのだ。古本界の「神在月」だなあ。一瀬直行の『随筆浅草』(世界文庫)2300円と『ゲイ・ボーイ』(書肆パトリア)500円、中谷孝雄『同人 青空・日本浪漫派』(講談社)2000円を買う。


そのあと、いつもの〈味路〉までテクテク歩き、ビールともつ焼き、ガツニンニク漬け。誰かのblogで知った『ウラBUBKA』12月号の特集「マンガ家のウラ」を読む。こりゃ、たしかに読み応えがある。駅前の和菓子屋で、ドラ焼をふたつ買って、ウチに帰る。さて、明日は朝から神保町だ。


そうだ、アンケートはさらにお二人から回答いただきました。嬉しいです。あと3日、ごく短い回答でも結構ですので、お待ちしています。


【今日の郵便物】
金沢文圃閣より新刊案内
「戦時占領期出版関係 史料集4」として、『書籍雑誌商資料 内地・植民地/1937〜41』全2巻が刊行されるとのこと。第1巻には日本読書新聞社の雑誌『出版文化』(改題して『書店文化』)、第2巻には『全国書籍業組合名簿 昭和十三年一月現在』を収録。ココの復刻は、本当の意味での出版史の基礎資料だ。各巻2万2000円は個人で買うのは無理だけど、しかるべき機関なら買えない額ではないはずだ。同封の「文献継承」のナカには、古書目録が数ページ。欲しい本が数冊あり。