サイン入れに行って本買って帰る

8時起き。雨。残りの味噌汁と玉子かけごはん。新潟で買った玉子かけ用の醤油が美味い。メール書いたり、企画をまとめたり。最近、思いついた企画はなるべく早い段階で出版社や雑誌に提案することにしているが、こちらから勝手に送っているので仕方ないとはいえ、1カ月以上放置されて理由も示されず却下されると、さすがに落ち込む。その一方で、打てば響くように「それ、やりましょう!」と云ってくれる編集者もいる。まあ、五回提案して一回実現すればいいほうかな。

『波』7月号の北方謙三×原武史「ハードボイルド映画 俺の五本、おまえの五本」が最高すぎる。原氏は政治学者ではなくTSUTAYAのバイヤー。北方先生は『ラスト、コーション』のタン・ウェイは「完全に本番行為を撮影してるよな」と断言し、編集部からツッコミを入れられている。北方先生はSFの『ガタカ』を面白がる柔軟性を持っている。ラストは「わき気にもハードボイルド精神は読み取れるんだよ」という名台詞で締める。編集部のツッコミおよび構成の腕がいい。雑誌にはこういう記事がかならず一本はなくちゃね。

雨が上がったので、自転車で本駒込の〈BOOKS青いカバ〉へ。まず、隣のタイ料理屋に入る。青いカバのカバ店長(タコ社長みたい)が打ち上げでよく使っていて、うまいと聞いていた。ランチが何種類もあり、値段も850円とリーズナブル。カオマンガイを食べるが、鶏肉もタレもうまかった。店員同士のタイ語の大きな会話や、大きな音でかかるタイのポップスもいい。

青いカバで『町を歩いて本のなかへ』にサインを入れる。新刊の棚を眺めていたら、池内規行『回想の青山光二 資料で読む「最後の文士」の肖像』(共和国)を見つけてこんな本出てたのかと唸る。青山光二と親交のあった著者の回想と、著作目録や年譜など。5000円という全集並みの値段を見てまた唸ったが、カードが使えるというので思わず購入。そのあと、古本の棚を眺めていて、『村山槐多全集』(彌生書房)2800円と山田太一『シャツの店』(大和書房)500円を見つけ買う。村山槐多は私がいま住んでいるマンションの辺りに、下宿していたのだ。

自転車に乗ろうと思ったら、シャツの胸ポケットに入れていたはずのカギが見つからない。周囲を探しても落ちていない。もしやと思って、さっきのタイ料理屋にもどってみると、荷物入れの中にあった。よかった。不忍通りの〈カフェ・ド・クリエ〉で『回想の青山光二』のページをめくる。挟み込みの「共和国急便」の社主の文章がいい。500部限定ということについて、「諸事即席で売れる本だけが本ではないし、こういう蓄積のある本を世に出すのも版元の仕事であろう。10年かかってもいいので完売してほしい」。こういう心意気に接すると、10年と云わず5年で完売するように応援したくなる。

某新聞の記者と待ち合わせ、カフェで取材受ける。「南陀楼さんを登場させるかどうかわかりませんが、とりあえず話を聞きに来ました」と悪気なく云えるのは新聞記者だけだろう。〈往来堂書店〉で洋泉社MOOK『ラジオ読本2017』買う。

夜はチューハイを飲みつつ、DVD見る。『新だいこんの花』のある回の森繁久彌が凄い。完全なノリツッコミを見せたり、ムエタイをやったりと大活躍。向田邦子が脚本なので、森繁が信頼して任せたのかもしれない。