雨の中でもジェットストリーム

8時半起き。昨日用意しておいたトーク用の荷物を持って、道灌山下からバスに乗る。早稲田で降りて、穴八幡へと向かう。交差点で信号待ちしていると、向こうから来た人たちが次々に境内への階段を登っていくので、ちょっと焦る。まだ20分前なのに。周囲にヒモが張り巡らしてあり、それを囲んで十数人が立っている。去年に比べるとちょっとヒトが少ないか。「久しぶり」と肩を叩かれると、〈デカダン文庫〉のおじさんだった。立ち話しているうちに10時になり、店員が動き出すよりも早く、みんなヒモをまたいで乱入し始める。


とにかくヒトが集中しない場所を選んで回る。『百店満点 「銀座百点」50年』(銀座百店会)500円、野間恒『豪華客船の文化史』(NTT出版)1500円、弓館小鰐『ニヤニヤ交友帖』(六興出版)800円、杉山平助『自由花』(改造社)400円、沢田一夫『人情寄席雀』(新典社)450円、外村繁『筏』(三笠書房)500円を抱える。〈古書現世〉のコーナーで、落合東朗(文)・薮野健(絵)『早稲田小事典』(論創社)1000円を見つける。早稲田大学の各学部の施設や周辺の史跡などについて解説したもので、「第一学生会館」「高田牧舎」「三朝庵」「図書館」などの項目がある。こんな便利な本が1984年に出ていたとは。現世ではもう一点、竹内善作『学校公共図書館 設立・運営の実際』上・下(東京堂、1949)を500円で。タイトル通り、公共図書館学校図書館の設計から開館準備、蔵書選択、運営までを説いた本。手にしたとき一瞬、「コレは書物蔵さん(http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/)向きかな?」と思いつつも、やっぱり買う(あとでセドローくんに、「書物蔵さんを狙って差しといたのに南陀楼さんに買われちゃった……」と云われる。書物蔵さん、お持ちでなければいつでも貸しますからねえ)。


目録注文していた、キネマ旬報編集『全日本映画館録 1951−1955年版』(キネマ旬報社)1500円、『団子坂の思ひ出』(大日本雄弁会講談社、昭和10)3000円も無事落手。前者は、全国の映画館のリストで、所在地、経営者、定員、映写機、配給の系列まで載っている(ただ番地まで載ってないのが惜しい)。製作者や俳優の住所録、主要映画館の写真もあり、いろいろ使いでのありそうな本だ。映画会社の広告も多い。後者は、講談社千駄木にあった頃の記念アルバムで、社員の写真が主だが、当時の社屋の写真なども入っている。社内向けの出版物なので、序文のあとに野間清治の大きな写真が入り、「社長様」というキャプションが。社員の中には『少年倶楽部』編集長の加藤謙一もいる。


途中で本の山をセドローくんに預けていたのだが、帳場に行くと彼は電話応対などで忙しそう。それで別のヒトに「預けておいた本があるんですが」というと、「ありませんねえ」と。古書現世に預けたというと、電話中のセドローくんのところに行き、本を受け取ってきた。そこにはでっかい字で「獣ススム様」と。オモシロすぎるけど、古本祭り初日の朝にやってる場合かよ! 牛イチロー先生(いろいろお世話になっているので、敬称が奉られる)と立ち話。「今日は天気、何とか持つかねえ」「持つでしょう」。お互い、まったく根拠はナイ。


東西線高田馬場に出て、池袋へ。ピーダッシュ・パルコの〈タワーレコード〉で、ドゥーピーズ[フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム3]、ムーンライダーズ[ゆうがたフレンド(公園にて)]を買う。〈新文芸坐〉へ。沢井信一郎の特集で、今日は助監督についた作品をやる。まず、野田幸男監督《0課の女 赤い手錠》(1974)。二回目だがやっぱりスゲエ。冒頭から意味なくヒトを殺しまくる郷硏治と、クールな潜入捜査官の杉本美樹(ただしセリフ回しは大根)が、危険な匂いを放つ。それを追うのが、政治家の丹波哲郎(9月24日に死去)と刑事の室田日出男。ラストの死闘で、室田は撃たれて刺されて焼かれてというサンザンな目に会う。このシーンで大量のゴミクズが舞い散るのもいい。終わって、沢井信一郎山根貞男トークがあるが、退屈で寝てしまった。《0課の女 赤い手錠》でどういう段取りを組んだかなどの具体的なハナシをしてくれればヨカッタのだが。もう一本は、鈴木則文監督《華麗なる追跡》(1975)。主演は志穂美悦子。徹頭徹尾、荒唐無稽なハナシだが、けっこうオモシロかった。


外に出ると、雨が大降りになっている。ありゃまあ。コンビニで傘を買い、高円寺へ。〈古本酒場コクテイル〉に行き、準備していると、オヨちゃん、塩山さん、音響担当の『ぐるり』の五十嵐さんが来る。6時前からお客さんが入ってきて、始まる頃には満員になった。今回はチャージ800円をとったのに、こんなに来てくれてありがたい。前半はいつも通りにオヨちゃんとぬるいトークをし、休憩を挟んでは、塩山さんに出てもらい存分に「野良犬」ぶりを発揮してもらう。終わってから、本の販売。数冊にサインを書く。そのあと、駅前の〈村さ来〉に場所を移し、打ち上げ。15人もいたので、ハナシが聞こえにくい。終わってウチに帰ったら12時前。一度やんだ雨がまた降っている。雨男の面目躍如の一日だった。